【書評】リハビリの夜
理学療法士として読んでおかなければいけないとずっと思っていた本だったが、ボリュームが多いのでやっと退職して時間ができたことで読むことができた。
「リハビリの夜」(熊谷 晋一郎著)
作者は脳性麻痺のため生まれつきの障害があり幼少期からリハビリを続けてきた当事者。そして現役の医師でもあることで医学的観点からもリハビリそのものに対しても異議や見解が綴られている。
リハビリを受けている側が感じる感覚や感情も事細かに表現されているが、とても客観視された文章の表現能力にまず感嘆すす。当事者感覚というものも、これまで共感できていなかったこと、またいかに正常の動きや反応に近づけることが無意味であったかということを考えされられた。久しぶりに衝撃を受けた本。
これまで熊谷さんは様々な方の手助けを得ながらも医師としての仕事と生活が成立するよう、ありとあらゆる工夫をされてきている。それまで長年積み重ねてきた経験から得た手段に対して突然現れた一理学療法士の介入や助言などなんの意味もなさないであろう。それはこれまで長年生きてきた高齢者を相手に自分がしてきた行動を反省させられるきっかけになった。
正直素晴らしい本であるが、理学療法士としての今後を見失う内容ではある。これまで自分の担当してきた方々へいかに理解している振りをして無理難題を貸してきたかということが嫌という程自覚でき、現状の自分の能力では理学療法という仕事の限界をとうに迎えていると感じた。
そんなこんなで障害克服や改善に重きをおくのではなく、今後は障害に合わせた社会環境やサービス提供をマネジメントする側に回りたいと改めて思うことができた。
この度無事にケアマネージャーの資格を取得できたのは、今後の働き方を軌道修正できるきっかけとなるだろう。これまで長く理学療法士として現場にいた経験も生かされるのであれば、仕事のモチベーションも保てるのではないかと予想する。
だたし難点はケアマネージャーの働きやすさは職場や活動地域によって大きく影響されるということ。正直理学療法は対象者個人の症状に違いはあれど原則1対1であるし、目指すべき方向は職場が変われど同じである。
ケアマネとして働くには多くの他職種を絡めた調整をしなければいけないし、その住んでいる地域の社会資源状況や家庭環境、はたまた同僚上司の主観も大いに絡んでくることを考えると職場と勤務地選びに大いに慎重になる。ある程度経験があれば選択肢も広がるだろうが、未経験者受け入れと教育体制が整っている職場には限りがあるようだ。
介護保険施設に勤務するようになってからはケアマネージャーとの絡みも増えて多くの人と居宅支援事業所を見てきたが、正直当たり外れの差がひどい。このケアマネじゃなかったら、この人はもっといい生活ができているだろうに。というハズレくじを引いた結果も見てきているし、逆に熱心なケアマネージャーさんが相手だとこちらの仕事にも熱が入り相乗効果を生む。
人とサービスを繋げる役割が主な仕事であると思うが、個人の能力差が大きいのは仕方がないとしても、なぜかその幅が広すぎるような印象がある。人を相手にするとうまくいかないことも多いんだろうな。
今日報道されていた医療従事者が被害にあった立てこもり事件も在宅支援の方向性が狂ってしまった結果なのではないかと想像する。もっと気力と精神力が養われてからではないと呑まれそうできついかなと及び腰になっている自分。
今一度仕事に重きをおくタイミングを考え直そう。