【書評】もし中学受験で心が折れそうになったら
実用書ばかりを読んでいたなかで、ホッと一息できる小説を読んだ。中学受験が題材になっているのでとても面白いしタイムリーなテーマだけに心に刺さった。
主人公は新米の塾講師であるが、6年生と一緒に成長していく家庭が心理描写もリアルなので作者の実体験なのかな。
心情が表現されている小説はやっぱり好きだな〜と改めて実感した。
特に印象に残った4つのワードだけこれから佳境に入った時、追い込まれて根本を忘れそうになった時に見返せるように残しておく。
・1つめは仕事を辞めて子どもと過ごす時間が増えたことで失敗しないために
『今はむしろワーキングマザーの方がいいのではないかという風潮がある。専業主婦の場合、子どもとの距離が近過ぎて、一生懸命になるあまり、子どもを追い詰めてしまうことがある。「できる母親」と思われたいがために、無意識のうちに子どもに「できる子」であることを強要する場合も多い。
一方ワーキングマザーは、家庭とは違う自分の世界をもっているから、子どもを自己実現の道具に使う必要がない。・・・つっききりで勉強を見てあげることができない分、うまくすれば子どもが早くから自立する可能性だってある。』
・2つめは計算ミスや字の汚さを責めずに笑ってあげるために家庭教師のセリフを抜粋
「それに一点でも多くの点数を取りたいと思うから、手っ取り早く点を稼ぐ方法ばかりを考える。最たるものがケアレスミスをなくそうってやつなんだけれど、ケアレスミスなんてどうやったってなくならないじゃないですか。そのときのコンディションだったり、性格だったりするわけですから」
「ケアレスミスで数点落とすことを気にするよりも、もっと難しい問題に挑戦する気概をもってほしい。それが勉強だと思います。」
・3つめはいざ本番を迎える準備を抜かりなく進めるために参考に
あらかじめ2月3日には2つの学校に願書を提出しておくのだ。2月2日の結果が合格であれば2月3日には難関校の2回目の入試を受けるが、2月2日の結果が不合格であれば、2月3日には滑り止め校を受験する。
インターネットでの合格発表の時間が深夜になる場合、子どもはその結果を見ずして床に就く。翌朝起きて合否を知り、その日の受験校に向かうということもある。
・4つめは息子にそのまま伝えたい主人公のセリフを抜粋
「今、みんなは、世界の子どもたちの中でもまれに見る恵まれた環境を活かして、勉強している。それは自分のためだけじゃない。きっと、未来の社会のためにみんなは勉強しているんだ。与えられた環境を最大限に活用して、将来世の中の役に立つ大人になることは、恵まれた人の使命だろうと先生は思う。」
こんな熱い先生が身近に本当にいればいいのになぁ〜とも感じたが、塾講師という仕事は不規則だし本当に大変だろうなとリアルな部分もわかって面白かった。